TikTokの契約と大統領選の行方

TikTokは、ソニーミュージックとの音楽使用のライセンス契約を更新したと発表した。公表されていないが、契約料は今回は上がったと言われている。

トランプ大統領のTikTokの米国内での使用禁止と言う方針は、選挙のためか進展していない。連邦判事が政府の一連の規制策に対して反対の判断を示したことなどが影響しているのかもしれない。しかし、理由は選挙でそれどころではないということだろう。

TikTokは、音楽産業にとっても重要なプラットフォームになっている。TikTokの7億人と言うユーザーが自分の動画に好みの音楽をつけて投稿することにより、多くのユーザに視聴される。ここから音楽も人気を得てヒットが生まれるようになって来ている。音楽産業は、YouTubeやFacebook 、Spotify、Apple Music, Amazon Musicなどのプラットフォームをプロモーションの重要な場として利用しているが,TikTokも非常に重要な場である。

ソニー以外にもユニバーサルやワーナーなど大手のレコード会社や独立系の多くのレーベルも、TikTokとライセンス契約を結んでいる。TikTokがまだスタートアップだった頃にはプロモーションの色彩が強くそのライセンス料も小額だったようだが、既にTikTokは連邦政府も無視できないような存在になっており、またTikTokのオーナーの中国バイトダンスの時価評価額は、1000億ドルとも言われている。レコード会社にとってもライセンス契約を強く主張できる段階になっている。

動画に音楽を複製して当てる権利はシンクロ権として音楽産業にとって急激に伸びている収益源だ。日本の著作権法上では複製権に含まれるが、アメリカの音楽産業では、シンクロ権を別途、映画会社やテレビ局などの動画制作事業者に請求している。

動画において音楽は重要な要素だ。それが有名なアーティストの楽曲なら、さらに魅力が加わる。インターネット上でも、動画が主流になっておりその動画に人気のアーティストの楽曲はユーザーを引き付けるために重要だ。

TikTokのユーザにとって、ソニーを始めとする大手のレーベルのアーティストの作品を自分の投稿動画に使用できる事の魅力は大きい。投稿するユーザーにとっても、それを視聴するユーザーにとっても音楽がキーとなると言っても良い。TikTok の人気の一つは、さまざまな動画を編集できることだが、それが音楽をつけたミュージックビデオのような形にできることが人気の秘密だ。それが、多くの同様の動画投稿サービスから抜け出た理由だ。

TikTokにとっても音楽がついて人気が出た動画が、何度も視聴されることにより、広告収入が増えるのでこれもまた音楽のもたらす恩恵だ。

このように音楽を中心に、TikTokとユーザーの好循環が生まれるので、レコード会社がライセンス料の増額を要求するのも無理は無い。ただ、ライセンス料の金額で合意できなくてもレコード会社も、TikTokから楽曲を引き上げると言うこともできない。そうした途端に音楽のプロモーションのための重要な場を失ってしまうからだ。そういう意味で今回のソニーとのライセンス料の増額による契約延長は双方にとって合理的な結論だろう。

このようなソニーなどのレコード会社の契約も、トランプ大統領の落選を前提に考えているのだとしたら興味深い。