ニューヨーク・タイムズが世界一

ニューヨーク・タイムズは、印刷版と電子版を合わせて契約者が800万人に達したと発表した。同時に、2021年年末までには850万人の見込みとしている。

長い間、アメリカの新聞はローカル紙が多く部数は少ない。一方日本には全国紙があり全国紙の部数は世界的に見ても大部数だと信じてた。ニューヨーク・タイムズもアメリカのローカル紙で、発行部数ははるかに少ない。

現在読売新聞のサイトには以下の表記がある。

20年11月現在の朝刊部数は795万4126部(日本ABC協会報告)。 読売新聞の発行部数世界一は、英国のギネスブックに認定されています。

読売新聞社ウエブサイト

読売新聞は、1,000万部を超えていたが徐々に部数を減らして、今は700万部台だ。

契約者数の増加に伴い、ニューヨーク・タイムズの営業成績も好調だ。今期は、販売収入が16 %増、広告収入が66 %増と言うことで、利益が9,300万ドルに達し、この発表を受けて株価は12%上がった。

インターネットの時代になって、印刷媒体は苦しい状況になっている。新聞も雑誌も部数と広告収入の両方の低下に悩んでいる。同様にインターネットメディアも収益化に苦しんでいる。これは、ネット上の情報の全てが無料だと言う観念が生まれて固定してしまったからだ。だから誰も儲からない不毛な状況が続いている。

読売新聞を含め日本の新聞は、日経以外は電子版には力を入れてこなかった。ニューヨークタイムスの印刷版と電子版の割合を発表していないが、圧倒的に電子版が多いはずだ。電子版の電子版の販売と広告の販売に力を入れてきた結果が、今回の800万人の達成だ

ニューヨーク・タイムズには、読売新聞と比べて大きなアドバンテージがある。1つは英語で書かれているために世界中に契約者を求めることができること、もう1つはニューヨークの名前を冠したニューヨークタイムスのブランドイメージだ。この2つのことが、アメリカ国内他の都市のだけではなく世界中から契約者を得る強さとなっている。

またニューヨークタイムスはインターネット上でも積極的なプロモーションを行っている。無料登録を促して、その後有料会員へと繋げてゆく。最大の切り札は、電子版にプロモーション価格を設定したことだ。1ヵ月8ドル89セントと言う価格設定は、日本の新聞の価格を考えるとかなり安い。これが契約者を伸ばしている原動力だろう。電子版なので追加のコストがかかるわけでは無いし、有料会員が増えれば広告料も値上げできる。印刷媒体の時代からの発想の転換ができている。

日本の新聞で、これができないのは、既に行っている巨大な印刷新聞ビジネスに大きな影響がでるからだ。逆に、ニューヨーク・タイムズがこれができるのはもともとの印刷版の部数がニューヨークに限られていることと、部数もあまり多くなかったからだ。

2011年のニューヨーク・タイムズの発行部数は110万部程度で、この10年で80万部まで低下している。このような状況であったからこそ、大きく電子版に舵を切ったと言える。1,000、万部に近い日本の新聞が同じようにできたかと言うとかなり難しい。

読売新聞を始めとする日本の全国紙は、毎年何10万部と言う単位で数を減らしている。どこかの時点で現在の体制が維持できないのわかっているのだろうが、抜本的なビジネスの転換をしていないことが不思議だ。

夕陽の当たる塀

TikTok 禁止か売却か

今週に入って、TikTokをめぐるトランプ政権の動きが激しくなってきている。

【ワシントン=河浪武史】トランプ米大統領は中国企業の北京字節跳動科技(バイトダンス)に対し、動画投稿サービス「TikTok(ティックトック)」の米国事業を9月15日までに売却するよう求めた。交渉が不成立なら利用を禁止するとも表明した。売却益の一部を国庫に納めることも要求し、中国勢の排除へ強権を乱発している。ティックトックを巡っては米マイクロソフトが2日、買収交渉に乗り出していると表明した。トランプ氏は3日、記者団に「マイクロソフトが買収しても構わない。9月15日までにマイクロソフトかほかの米企業への売却が決まらなければ、ティックトックの利用は禁止する」と主張した。

日本経済新聞 2020年8月4日

事業の禁止か売却ということで、自由主義の国では今までないような強権の発動である。2002年の911以来のことだとおもうが、「安全保障」を理由にすれば何でも可能なのが、トランプ政権に限らずともアメリカの現実だ。

さらに個人情報保護は喫緊の課題であり、2016年の大統領選挙ではトランプ陣営が個人情報を活用して、特定の細分化されたターゲットに対してきめ細かいメッセージを打ち分けたり、フェイクニュース的な手法を使って成功したことも記憶に新しい。アメリカに限らず私たちの現実は、細かな個人情報が大手のネットビジネス・プラットフォームに握られているのは事実だ。これを悪用することが可能なことは多くの事例が証明している。個人情報が、かつての石油や領地、産業知財と同様に国際紛争の中心になってきている。日中の新冷戦においても個人情報を巡って争われてきているファーウエイに続いてTikTokが争点になっているのも個人情報の保護が争点だからだ。

TikTokは中国のバイトダンス社のショートムービーのプラットフォームだ。世界に8億人のユーザーがいると言われ、16歳から24歳の若者がその半分を占めると言われている。世界155カ国で75の言語で稼働中である。ネットのスマホ化により、動画の重要性が増しているが、その重要な一角をしめていると言える。

2017年にソーシャルメディアプラットフォームのmusical.lyを買収し、サービスを統合したこともきっかけとなりアメリカでの普及は急速に進んでいる、過去十八ヶ月でアメリカの成人では利用者が5倍以上になったということで、若者に限らず、モバイルの動画プラットフォームとして中心的なアプリとなっている。

9月15日までという期限が切られているが、マイクロソフトの買収交渉が成立するのかどうか。さらに、ファーウエイのケースのように世界各国が安全保障を理由にTikTokに対する規制や禁止に動くのかどうか、当分目が離せない。