調査の限界

よその国の選挙だが、今回は特別の関心を持って見ていた。明らかに人格に欠陥がある人が、また選ばれるのかどうかと言うことだ。人格か政策が問われている。

政治とは、結果が全てで、プロセスや動機は関係ないと思っているが、それにしても、それを行う人の人格を信じられるかどうかによって国民の見方も変わる。あるいは、人格は前提かもしれない。

今回の事前の調査では、明らかにバイデン候補のリード予想されていた。開票が始まると早々にバイデン候補のリードか激戦が予想されていたフロリダやオハイオが、かなりの差でトランプ大統領のものになった。予想外の出来事だ。

他の州でも調査結果を大きく上回る得票でトランプ大統領は健闘して、現時点でもどちらになるかわからない。

この状況を受けて、トランプ大統領は早々と勝利宣言を行った。この辺は、この人らしく、不利の伝えられる郵便投票などの結果を封じ込める戦術と言うこともあるのだろうが、投票結果が確定するまですべきでない行動をとった。政治家としても人としてもあり得ない振る舞いだ。

開票が進んでいて、しかもまだ郵便投票の開票が遅れるということがわかっているので、どちらに転ぶかわからない状況での勝利宣言には、身内の共和党からも非難の声が出ている。

私も仕事でたくさんの調査を行ってきたが、調査の数字をそう信じていたわけでもない。調査は事前の設計の段階から仮説を持って行うので、たいていはその仮説を検証するためだけで予想しなかったことがわかると言う事でもない。つまり、わからない事は調査結果でもわからない。また調査の選択肢を作る段階でいくらでも操作も可能だ。

スティーブ・ジョブズはマーケティング調査を行なかったし、それは彼の信念だった。消費者は自分の欲しいものがわからないし、全く新しいものを作ろうとしている時に、それについて聞いたところで消費者は回答できないと言う信念に基づくものだ。T型フォードを開発した自動車王、フォードも同じようなことを言っている。車の開発に当たって、もし調査をすれば、もっと早い馬が欲しいと言う結果が出ていただろうと答えたと言う。

ただ今回の大統領選挙の調査に関しては、2択の質問で、どちらを支持するかだから、質問に対する答えは明白なはずだ。ただそれが調査と言う形を取るときに、回答者がどれだけ正直に答えているかと言う事、メディアを含めてあれだけ非難をする人が多い人物を支持すると答えることを避けた回答者が一定数いたと言う事、サンプリングで調査の電話をかかってきたときに、トランプ大統領の支持者は調査の回答を拒否するという事、いくつか要因はあるのだろう。

また、事前の調査がどれだけ投票結果に反映されるかと言う問題もある。選挙においては「アナウンス効果」と言うことがよく知られている。ある候補が優勢との調査結果がある時に、その支持者は安心して投票には行かない。そして、不利な対立候補の支持者は危機感を持って投票所に足を運ぶので、実際の投票結果は事前の調査とは別のものになってしまうということだ。今回も、トランプ大統領の不利が事前調査として伝えられていたので、支持者は投票所に行き、反対にバイデン候補の支持者は行かなかったということもあるのかもしれない。

それから重要なのは、民主党も消去法でバイデン候補になっているので、反トランプだが、明確なバイデン支持者は少ないということだ。バイデン候補のためにどうしても投票所に行かなければという意思が強かったかどうか。

まだ、いくつかの州で開票が進んでおり、郵便投票は6日までの到着が対象のようなので、選挙の結果が確定するまでに数日かかる。拮抗しているノースカロライナを始めとする州の結果如何ではどちらに転んでもおかしくない。

今回の選挙は人格か政策かと言うような選択を迫るもののようだが、日本でも1年以内に選挙があるので私たち日本人も今後の日本の進むべき方向について考えた上で政策に投票すべきであろう。