テイラー・スウィフトのビニールレコード

昨年12月に発売されて、ビルボードで1位になったテイラー・スウィフトのアルバム「Evermore」が、ビニールレコードやサイン入りCDなどの発売で、アルバムチャート1位に再び返り咲いた。ビニールレコードは既に1週間で10万枚以上が売れたと言うことだ。この売り上げ枚数は、1991年から記録を取り始めたMRC Dataによれば、過去最大の売り上げ枚数だと言う。1991年はすでにCDの時代でビニールレコードはあまり売れていなかったが、それでもすごい枚数だ。

音楽産業はデジタル化が進み、AppleのiTunesの普及が始まった2004年ごろからダウンロードが増え始め、さらにストリーミングは少し遅れて普及が始まっている。ダウンロードについては2012年にピークを迎えたが、その頃からストリーミングが急増し、2020年の全世界の音楽関連売り上げの215億ドルのうち、134億ドルつまり62.3%はストリーミングによる売り上げとなっている。

このデジタルによる売り上げが増えるにつれ、CDやビニールレコード等の物理的パッケージは徐々に減少を続け、2020年では42億ドルつまり19.5%まで減少した。

このようなことを考えると、今回のテイラー・スウィフトのビニールレコードの販売枚数は驚異的なものだ。まだCDプレーヤーがある家庭は多いだろうが、ビニールのレコードをかけられる家庭は少ない。そのような環境下で1週間に 10万枚以上売れると言うのは、レコードプレーヤーを持っている人はかなりの確率で彼女のアルバムを買ったと言うことなのだろうか。

そもそも、ビニールレコードを作る工場そのものがほとんど存在しない。だからアーティストがビニールレコードを発売しようとしても、かなり時間のかかる作業となる。だからアーティストは、レコードアルバム購入者のために、ビニールレコードが完成し送付できるまでの間、CDを送ってビニールレコードの到着まで待ってもらうような仕組みがある。

テイラー・スウィフトのような大物でない限り、ビニールレコードを発売しようと言う計画はそもそもないだろう。アルバム発表から半年経って、ビニールレコードの発売で1位に返り咲きと言うことを最初から狙ったわけではなく、ビニールレコードの製造と言う工程の都合上この時期になったと言うのが自然な考えだ。たがそれが功を奏して、再び1位。多分その効果でストリーミングやダウンロードなども売れているのだろう。

しかし、時にこのテイラー・スウィフトの「Evermore」のようなビニールレコードの大ヒットが出ることもあるのだろうが、音楽業界全体としてはストリーミングに代わる販売方法はもう無いように思われる。理由は簡単だ。好きな音楽を聴くときに簡単に選択ができる。ビニールレコードやCDでは物理的なパッケージを探して、機器で演奏する作業が発生するし、ダウンロードでもそのデータを探し出す作業がある。

ストリーミングなら自分で所有していないと言う利点があり、Spotifyのようなストリーミングサービスの検索窓に探したい曲名やアーティストを入れるだけで簡単に済んでしまう。自分で使い始めると、これほど便利なものはない。ビニールレコードもまだ数百枚持っているが、過去30年ほど触ったことがない。CDも200枚ほどあるがこれも年に何度かと言う感じになってしまった。テクノロジーの変化によって生活習慣が変わってしまう例だろう。これから、運転や読書といった他の習慣も変わってゆく。