注射器問題

ワクチンを積んだ航空機の映像をニュースで何度も見るようになった。コロナウィルスから日常生活を奪われた私たちにとっては希望の光だ。

ただ現時点まではまだ数百万人分しか届いていない。予定されている全数が日本に配送されるまで、どの程度かかるのかよくわかっていない。年内いっぱいかかるだろうと言う人もいる。

コロナ禍は、ワクチンが全国民に行き渡るまでは事態は収束しない。しかも全国民へのワクチンの接種が終わっても、マスクをしたり手洗いをしたり三密を避けると言うような、今の行動パターンは変えられない。しかし、少なくとも経済生活は元に近づく。だからワクチンの接種は非常に重要だ。

しかし、問題はワクチンだけではない。ワクチンだけでは機能しないのだ。ワクチンを接種するための注射器がいる。世界では80億本から100億本の注射器が必要だ。普通に年間に使われる160億本の注射器のうち、予防接種に使われるのは5%から10%と言うことだ。つまり予防接種用は最大で16億本にしかすぎない。それ以外は、もちろん様々な医療目的に使われている。

この予防接種用の注射器16億本は、今年もゼロにはならず、さらに80億本から100億本を必要とする。世界の注射器メーカーは、50%以上の増産をしなければいけない。

ワクチンの開発には、現在までに莫大な税金が投じられているが、注射器の開発にはあまり資金が使われていない。

ファイザーのワクチンを最大限に利用するためには、ワクチンの注射器の中にデッドスペースを作らないようにする必要がある。そのような特別の注射器を使用する。0.3ミリリットルのワクチンを収容して注射ができ、しかも注射器内にワクチンが残ってはいけないのだ。このために、注射器の中に無駄なスペースがない特別の注射器を使用する。これによって、1瓶から6人がワクチンを受けられる。アメリカのFDAによれば、場合によっては7人目も接種を受けられるとしている。

この特別な注射器が日本にはあまりないために、加藤官房長官は通常の注射器を使って、注射器の中に残るワクチンを廃棄するとしている。その量はその量は数百万回に相当すると言うことだ。世界でもニュースになって、日本はワクチンを廃棄すると言われている。世界の国には、ワクチンの供給を受けられない国もあるというのに。

注射器に求められる機能は他にもある。ユニセフが求めているのは、1回使うと壊れる注射器だ。これは使用済みを誤って使うことにより病気が広がることを防ぐために必要だと言う。

日本も大量の注射器を必要としている、全国民が1人2回接種を受けるとして、現時点では対応が決まっていない幼い子供を除いても2億本の注射器が必要となる。

そんな中、京都府宇治市の病院は、糖尿患者のためのインシュリン用の注射器を使ってワクチン1瓶あたりの接種回数を1瓶5回から7回に増やすると発表した。

インシュリン用の注射器は、皮下注射に使われるために針が短いが、欧米人よりも日本人は皮下脂肪が薄いので、筋肉注射が可能だと言う。1瓶で7回できると言うことになると廃棄される分がなくなるので、非常に良いことだ。

しかし、問題は、このインシュリン用の注射器ですら大量にあるわけではない。日本政府は、昨年夏に日本国内の注射器メーカー6社対して注射器の増産を依頼している。この6社はテルモ、ニプロ、トップ、ミサワ医科工業など。また同時に世界の注射器メーカーにしても注射器の発注を行っている。インドの注射器メーカーは1500万本の発注を日本政府から受けていると言っている。

テルモは、ワクチンが6回注射できる注射器の開発に着手と今年の2月に言っているが、いつまでに製造できるか明らかにしていない。一方、ニプロは、6回の接種が可能となる注射器を扱っている。その月間生産量は約50万本。9月ごろには日本国内に1カ月で数百万本の供給を目指しているという。これが、ワクチンの配送時期と重なって、接種回数が増えることを望む。

ワクチンの日本国内での配送がどの程度のスピードで進むかどうかわからないが、ワクチンの問題だけではなくて注射器も大きな問題と言うことがわかってきた。