Bob Dylanの終活

Bob Dylanが、彼の持つすべての彼の作品の権利を3億ドル以上で売却したと言うことがニュースになっている。個人的な感覚からすると、彼の作品の権利が300億円少しと言うのは少し安いような気もする。購入したのは、フランスのビベンディの子会社の世界的音楽事業者のユニバーサル。

300億円は適切?

記事にも出ているが、ストリーミングで過去のヒット曲の価値が上がっているということも一つだが、ノーベル賞も受賞したソングライター・歌手としては唯一無二のものだ。それから、今後の権利の長さ。アメリカの著作権は、ミッキーマウスの著作権切れを守るためと言うような言われ方をするが、何度ともなく延長されて、今は著作者の死後70年まで残されている。Bob Dylanは存命で、死後の70年間という長い間に彼の作品の権利から生み出される金額は、もっと多いような気もする。さらに、このような著作権者の権利を守るために今の70年という期間も延長されないとも限らない。現にミッキーマウスの権利は、2023年には失効するために、さらなる延長という議論もまた出ている。

7作品を100ドルで売却

いずれにせよ、300億円が高いか安いかと言うよりもBob Dylan本人にとって、自分の死後作品が全体として適切に管理されて人々に愛されると言うことを望んだのではないだろうか。ミネソタからニューヨークに出てきたBob Dylanは、1962年に最初のレコードを出すにあたって7作品について将来の権利も含む全ての権利を100ドルで契約している。“Song for Woody” や“Talkin’ New York”を含む7作品なので、その累積価値は莫大だ。今考えてみるととんでもない契約だが、当時21歳だったBob Dylanにビジネス感覚があったわけでもないだろうし、売れるかどうかも、契約した会社にとってもわからなかった。

結果としてユニバーサルが全作品を所有

このために今回Bob Dylanが、ユニバーサルに売却した約600作品に当初の7作品は含まれていない。しかし、この契約をした会社は、今のユニバーサルに買収されている。ユニバーサルは、結果として今までBob Dylanが発表している作品の全ての権利を持つことになる。

Bob Dylanはまだまだ現役

ついでに言うと、Bob Dylanが今回売却したのは現時点までの作品で、これから将来彼が発表する作品の権利を売却したわけではない。Bob Dylanがあと何年生きるかどうかわからないが、彼の今の活動を見ていると、あと10年くらいは平気で現役でいるのだろう。最新作も衰えを感じさせない、力を持っている。これからも、ヒット作を出していくのだろう。

最近では2018年にフジロック出演

Bob Dylanの来日公演は、1978年の第1回から9回行われている。アメリカ駐在時の1994年と2018年の苗場のフジロックフェスティバルを除いて、必ず見ている。最近は、楽器を演奏するときの感触が少し衰えているか、ピアノを弾かなかったり、ギターを演奏するのも少なくなってきている。それでもあのステージをこなしているのだから、体力的には問題ないのだろう。

他のアーティストのカバー曲の多さ

Bob Dylanの曲の権利は、彼が録音した曲はもちろんだが、多くが他のアーティストにもカバーされて、これが莫大な収益を生んでいる。21歳の時には音楽の権利ビジネスについて失敗をしたせいか、権利で儲けると言う事について意識が強かったようだ。初期の頃から、彼の作品は多くのアーティストにカバーされたために、その収益の大きさに驚いて学んだのかもしれない。有名なオートバイ事故の後の隠遁生活の中で、ウッドストック近くの牧場の地下で録音されたアルバム”The Basement Tape”は、Bob DylanとThe Bandの共演だが、これは他のアーティストに作品を提供するときのデモテープとして意図されて録音されたと言うことらしい。

レガシーを守る

Bob Dylanは高校時代からのアイドルで、ずっと彼の作品を聴いて育ってきたので、思い入れが最も強い。その彼がこのような形で終活を始めると言うのも、時の流れを感じる。あれだけの作品を持ち、ノーベル賞を受賞した今となっては、自分のレガシーを守ると言うことが大事になってきているのだろうか。

彼の作品が生み出す著作権料や広告への権利の許可料など、個人で管理するのには全世界におけるビジネスが膨大なものとなり、きちんとした会社が管理していかないと作品の権利と品位が守れないと言う判断をしたのだろう。実際にVictoria’s Secret、Apple、Cadillac、Pepsi 、IBMと行った会社が彼の作品を広告に使用したが、この際には会社の内容、使われ方など綿密な打ち合わせが必要だろう。これも含めて、彼の遺族が管理してゆくには巨大なビジネスという判断か。しかも全世界でのビジネスだ。権利が散逸して様々な権利保有者が安売りをしたり、品位が守れないような使われ方をされることを望なかったのだろう。その点、最大の音楽事業者のユニバーサルなら世界的な権利の管理は問題ないだろう。私もいかがわしい事業者が”Like a Rolling Stone”を広告に使っているところを見たくない。