Appleのプライバシーポリシーの変更の意外な受益者

Appleのプライバシーポリシーの変更によって広告市場は大きく変わった。多くの広告主は、今までよりも高い新規顧客獲得コストを支払うようになっている。

プライバシーポリシーの変更により、Appleのユーザーが個人情報やデバイス情報を共有しなくなったため、ターゲットリングの精度が落ちているからだ。結果として、今まで同じ広告費をかけても新規顧客獲得が少なくなっている。

Appleのプライバシーポリシー変更の一つは、IDFAだ。IDFA(Identifier For Advertising)は、広告識別子で、AppleがiPhoneにランダムに割り当てているデバイスID。広告主はこれを使って、ユーザの行動履歴などを把握してターゲティングを行う。IDFAは単なる数字の羅列で個人情報が含まれていないから今までは誰でも自由に使うことができた。広告主や広告会社は、これを利用して、ターゲットの把握や広告の計測を行ってきた。しかしiOS 14以降では、ユーザごとに許諾と言う形になってしまった。オプトアウト方式がオプトイン方式に変わったということで、これではIDFAを共有する人は限りなくすくなくなっている。広告主や広告会社は、IDFAを使える可能性は劇的に減少した。

この結果、業界団体によれば、Appleのデバイスでは広告の効果が15〜20%は減少と推定されている。また、iOS 14の利用者は70%程度と推定されている。そして、今後のシステムアップグレードに合わせてこの数字もさらに上昇することが予想される。結果的には、iPhoneではデバイスを識別することはかなり難しくなってゆく。

Appleのプライバシーは厳しくなっており、2021年4月にはアプリごとにトラッキングを許可するか、不許可かをユーザに尋ねる仕組みを導入している。75%くの人はトラッキングの不許可を選んだと言う報道もされた。

このAppleのプライバシーポリシーの変更に最も大きな影響受けているのが、世界第二の広告メディア会社であるFacebookだ。FacebookやInstagramの広告も、ユーザの特性や行動履歴が把握できず、広告の効果が大きく落ち込むことになった。もともとAppleとFacebookはトップ同士が仲が悪いこともあり、対立関係にある。今回のプライバシーポリシーの変更によりFacebookの収入のほぼ全ての広告に大幅な影響が出る。これによりますます対立をエスカレートすると思われる。とは言え、ユーザのプライバシーを守ると言うAppleの主張に対抗ことができないから、Facebookは対応策を考えているはずだ。もしかするとそれがメタバース構想なのかもしれない。

Ad Ageの記事によれば、Amazonの広告が好調だようだ。商品の購入の検索については、Googleの検索ではなくて、アマゾンで最初から直接検索する人が増えている。そのために広告主はGoogleのリスティング広告ではなく、Amazonに直接広告を出すケースが多い。このために販売につなげるような広告の場合には、Googleを使わないと言うことが増えると、世界最大の広告メディア会社であるGoogleの売り上げに大きな影響が出る。

同記事によれば、ニューヨークの広告会社の300のクライアントのうち40%が、Facebookの効果が落ちたと言っているという。Appleのプライバシーポリシー変更は、Facebookに大きな影響を与えているようだ。

FacebookやInstagramの広告が効果的でなくなると、ここでもAmazonでの広告が有効な選択肢となる。アメリカ国内だけでも1億5300万人のAmazon Primeの会員がいる。これらの人々は、オンラインで物品を買う人であり、広告主にとって有望なターゲットである。これらの人にむけての広告は非常に有効であろう。

アメリカのインターネット広告市場は、約20兆円。しかし、Amazonのユーザに対して広告を入れる事は、反感を買うのか可能性があるとして、Amazonは広告を入れることに躊躇していた。しかし、広告を入れ始めると、Amazonの中でも最も成長の著しく、高収益の部門となった。

今日、Amazonはデジタル広告市場の10.7%を占めている。Googleの28.8%、Facebookの25.5%に比べればまだ少ないが、Appleのプライバシーポリシーの変更等を背景にもう少し差を詰めてくるのではないかと思われる。