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ディズニー映画「ムーラン」の不運

ディズニーの「ムーラン」が新疆ウイグル自治区で撮影され、地元政府の協力を得て製作されたことでディズニーへの批判が高まっている。また、主演女優が香港の地元警察を応援するツイートをしたことでボイコットが呼びかけられていた状況が悪化した。主演女優のリウ・イーフェは武漢市出身で、このツイートを責めることは誰もできないだろう。

新疆ウイグル自治区では、中国政府のウイグル族への大規模な人権侵害が問題視されている。強制収容所や文化的な迫害といった噂が流れていて、中国政府はこれを否定している。

ディズニーのビジネス的な戦略は間違っていない。映画の市場は、この数年は1位 アメリカ、2位 中国、 3位 日本、4位 イギリスで固定されていたが、去年には中国がアメリカを抜いて世界一位の映画市場になったと推定されている。中国以外市場ではもう何年も市場規模は横這いで、中国だけが伸びている。

そのマーケットの状況を受けて、1998年のディズニーアニメ「ムーラン」の実写版の企画は健全なビジネス判断だ。ムーランは、古代中国を舞台に男装して国を守った少女の物語で、中国では間違いなくヒットする企画だ。

撮影には5年かかったということだが、誤算はその間に中国とアメリカの関係が急速に冷えていったことだ。2016年の大統領選挙でヒラリー・クリントンが勝利していたらと考えてしますが、栓のない話だ。

元々、覇権を目指す中国とアメリカは衝突する軌道にあったのだろうが、トランプ大統領の登場で速まってしまった。

ムーランの製作費は200億円を超えるようだが、ディズニーは歴史的には大作主義ではない。超人気俳優を避けて中規模の予算で暖かい内容の映画を制作する会社だった。少し変わってきたのは、テレビ局などの買収で巨大企業化してからだ。2003年の「パイレーツ・オブ・カリビアン」あたりが転機だったかもしれない。これには、映画ビジネスの変質も関係しているかもしれない。ブロックバスター映画で大規模なマーケティングと公開スクリーンによらなければ観客を呼べなくなってきたことも関係しているだろう。映画は多くのバラエティーのある作品が公開されるビジネスだったのである。それは、徐々に変質していった。刺激はさらに強い刺激でないと満足なっていくような物だ。

ディズニーの今回の不運はグローバル化するビジネスは、20世紀よりも多くの地政学的な影響を受けるということを示している。