朝陽

日本テレビの「ネット同時配信」

日本テレビは、「ネット同時配信」を10月からプライム帯(午後7~11時)をトライアルベースで行うと発表した。これはすでに実施しているNHKに次ぐもの。民放では初。

トライアル期間は12月までだそうだ。配信は「TVer」(ティーバー)などが使われる。「TVer」は、民放キー局が共同で立ち上げた無料配信サービス。

日本テレビの意図は、「テレビを持っていない人、見ない人」が対象だそうだ。

同時であるかどうかは別にしてネット配信にはいくつかの問題がある。1つは著作権の問題とコストの問題である。出演者を含め基本的には著作権のクリアは通常は地上波での放送だけになされている。せいぜい地上波での再放送までだ。これをネット配信するとなると追加のギャラや著作権使用料が発生する。ネット配信を含むと言うことになるとこれは別途費用を再交渉が必要になり、今までと同じようにはいかない。

当然のことながら放送波とは別に配信業務を行うのでこの体制の人件費と経費が発生する。

さらに厄介なのはネット配信をすると、日本全国あるいは世界が対象になる。どこまでジオコントロールをするかと言うことなのだが今のところ日本全体と考えても、民放キー局の放送エリアを超えてしまうから問題になるのだ。民放キー局には各県に系列局があるここの視聴者を奪うことになる。

各県のローカル局はキー局やその親会社の新聞社の資本が入っているケースが多い。ネット配信を行うことで、ローカル局の視聴者を奪うことになる。結果としてローカル局の経営に影響が出るような事業の実施は難しい。今回の日本テレビのトライアルは別にして民放各局がネット同時配信を行うと言うのはかなりハードルが高い

しかし、民放テレビ局の経営の見通しは明るくない。10代、20代のテレビ視聴時間は、2014年時にネット利用時間に追い抜かされており、その差は大きくなってきている。広告費も2019年にインターネットの広告費に抜かれていて、こちらも差は大きくなっていくと予想されている。

テレビも含めた以前よく言われてマス4媒体、つまりテレビ、ラジオ、新聞、雑誌は接触時間でも広告費でもインターネットに侵食され、今後の経営環境は不透明だ。だから、今回の日本テレビのネット同時配信は危機感の現れだ。

ただ、同時配信でなければいけないのかということもある。「TVer」に限らずとも、「ネット日本テレビ」を立ち上げて、著作権やギャラの問題が解決した番組やネット専用番組を、加入料不要の広告メディアを立ち上げても良いのかと思う。日本テレビはすでに「Hulu」によりネット配信ビジネスを行っているので、これとは別に広告によるネットチャネルを立ち上げても良い。

アメリカでは、NBCの子会社の「ピーコック」が2020年の4月からネット配信ビジネスを開始して、すでに1500万人の会員を集めている。「ピーコック」の名前は、NBCのロゴマークから名前が付けられており、アメリカ人であれば誰でもNBCを連想する無目である。

「ピーコック」は、3つのサービスに分かれており、そのうち一つは加入料無料の広告モデルである。日本テレビも、今回のトライアルを通じてノウハウを蓄積して、Huluも含めて同様のネット配信ビジネスを検討しているのかもしれない。