「フェルメールと風俗画の巨匠たち」展

もう30年近くもかけてフェルメールを見る旅を続けてきた。すでに実作と言われている作品はすべて見ている。最初に見たのは1989年のニューヨークだった。それ以前にもルーブルとかナショナルギャラリーとかで見たかもしれないが、大きな美術館でフェルメールを見つけるのは難しい。と言うか、それ以前にはフェルメールを意識していなかったからだと思う。

ニューヨークのフリックコレクションは小振りな美術館で作品を外に貸し出さないので有名だが、多くの有名な画家の作品と並んで、フェルメールを三作も所蔵している。それは、「中断されたレッスン」、「兵士と笑う娘」、「婦人と召使」だ。屋敷を改造した美術館でフェルメールを三作も持っているのだから、フェルメールがいかにも目立つ。その時には知らなかったが、現在の認められている作品、36作のうちの3作だからすごい率だ。しかも、初期の若書きと言われる物語画4作やワシントンDCにある「フルートを持つ女」や「赤い帽子の女」の2作は研究者によっては真作とは認められていないから、現存する実質的とされる作品数は30作だから、3作も所蔵しているということはすごいことだ。

そのフリックコレクションを訪れたのは1989年の夏のことだった。5番街の一角に建つ建物は、メトロポリタン美術館が美術館なら、美術館には見えない。中に入ると静かな雰囲気で、広い中庭があり美術館の雰囲気とは違っている。その時点ではあまり知らなかったが、このような邸宅を改造した美術館はあんがい多いもので、この後、ニューヨークやワシントンDCでも行ったし、ヨーロッパでも多くいった。

今回、パリに行ったのは、そのフェルメールの絵が12作も展示されるということで急に思い立って出かけた。先ほどの30作からすれば、これだけで40%もの作品が終結したということだ。この規模でフェルメールが集まるのは20年に一度くらいの出来事なので行ってみたかった。

パリは一昨年のテロの影響で大規模な施設では必ず手荷物検査があったが、ルーブルも例外ではなく、入り口で空港のような機械に手荷物を通して、金属探知機をくぐらなければいけなかった。ここがすごく混んでいてさすが観光立国のフランス。すごい人数が訪れるのであろう。調べてみるとテロの影響で減ったとは言え、2016年の数字で3000万人だから日本全体よりも多い。そういうことでルーブル美術館自体もすごい観光客だから、これを入館調査するとすごい時間がかかるだろう。予約のチケットを見せると少しは早くなるのだが、これがなければ1時間待ちは確実だろう。でも、このセキュリティを済ませても、まだフェルメールが展示されている「フェルメールと風俗画の巨匠たち」展で列を作らなければならない。これが約40分。二度行ったが、待ち時間は二回とも同じくらいだった。

さて、それでやっと展示。会場は、デホーホなどの同時代のオランダの画家を加えて、音楽や手紙のコーナーになっているのでフェルメールを一杯見たいということを一目で満足させることはできない。でも、同時代の画家の同じテーマも作品も見比べることでゲルメールの立ち位置がよく分かった。つまり同時代の風景画を同じようにだが、ただ天才的に描くことはできたが、個人的に何か別の要素を加えたということでもない。何年か前に東京でも同じような趣旨の展示を見たが、その時にはあまり感じなかったが、フェルメールのすごさは同じ題材を扱っても別の次元まで高めたということだ。これが、彼が職業的にたくさん描いて稼ぐというよりも義母の仕事もしながら時間をかけて描けたということも関係するのかもしれない。

二度、ルーブルには行ったが、それ以外は観光というよりはカフェや川岸で本を読んだり東側の市場に食事に行ったりして過ごした。朝晩は冷え込むものの日中は晴れて暑いくらいの天気でのんびりとした良い休暇を過ごした。

写真はサンマルタン運河に行く途中のリパブリック広場。