ジョン・グリシャムの新刊が村上春樹訳

書店で平積みになっているジョン・グリシャムの新刊が村上春樹訳と言うのに非常に驚いた。ジョン・グリシャムと村上春樹というその組み合わせが、私の想定外だったからだ。どちらも好きな小説家だった。と言うのは最近はどちらの小説家の作品もあまり読んでいないからだ。

ジョン・グリシャムに関して言うと、10年位前までは必ず新作を読む習慣だった。1989年にアメリカの大学に行った時に、書店に行くと必ず平積みになっていたのが、カズオ・イシグロの” The Remines of the Days”とジョン・グリシャムの”The Firm”だった。人気のあるものを読んでみようと言うことで、どちらの作家も知らなかったが、両方とも買って読んだ。そして、どちらの作品にも違った形で面白く読み、興味を惹かれた。それ以来、その2人の作家は私の購読対象リストに入った。

ジョン・グリシャムと言えば、The Firm

ジョングリシャムに関して言うと”The Firm”の設定とストーリー展開に引き込まれ、それ以来あの感覚のためにずっと読んできたが、10年位前に、もうその感覚がないと感じて読むのをやめた。当時は、ミステリーに関して言うともっと他の作家に時間を取られることが多く、ジョン・グリシャムまで手が回らなかったのだ。例えばマイケル・コナリーやブライアン・フリーマントルなどだ。

村上春樹については、アメリカに行った頃から読まなくなってしまった。理由の一つは、あまりにも人気作家になって、ヒット作を連発するので、あまのじゃくの性格が村上春樹を遠ざけたのかもしれない。それでも短編集が好きで時々は読んでいる。長編は、「ノルウエーの森」が最後になっている。

いずれにしても、気になる作家が組み合わさっているので、読まなければいけないと、読みかけの本を中断して久しぶりにジョン・グリシャムの本を購入した。Kindleだ。電子本は、読みたい時にすぐに買えるので便利だ。

「グレートギャツビーを追え」とは、

翻訳のタイトルは、「グレートギャツビーを追え」だが、原作は”Camino Island”。ギャツビーはタイトルには入っていない。タイトルを決めたのは、村上春樹か出版社かわからないが、この小説のタイトルとしては、こちらの方が良い。ただしジョン・グリシャムは、この続編とも言うべき、”Camino Island”の主要登場人物が主役となる続編の”CaminoWinds”を出しているので、シリーズ化する意図が最初からあったのかどうかわからないが、2冊出てみると原作のタイトルは収まりが良い。

文学論か?

読んでみて思ったのは、この小説はジョン・グリシャムの単なるミステリーと言うよりも、文学や作家論で多くの作品や作家に言及する。ジョン・グリシャムといえば、いくつかの例外を除いて法廷ミステリーだが、この作品は本についての愛情の表明的な意味がある。オンライン書店ではなく、リアルの書店の役割や楽しさも描かれていて心地よく感じる。そこにも村上春樹は惹かれたのかと思った。さらに、中心となるのがF・スコット・フィッツジェラルドのオリジナル原稿と言う事と、それがプリンストン大学の図書館から盗まれると言うことだ。村上春樹のフィッツジェラルド愛は有名だし、実際にグレートギャツビーも翻訳している。それから、村上春樹はいっとき、プリンストン大学で学んでいた。そういうことで、村上春樹がこの小説の翻訳に関心を持つことが理解できる。

また、主人公がスランプに陥った小説家で、彼女が自作について悩みながら事件に巻き込まれていく展開は、作家の気持ちとして、村上春樹にとっても共感できる内容だったのだろう。

モデルはアメリア島

小説ではCamino Islandとして登場するが、モデルとなっているのは、フロリダ州のジャクソンビル郊外のアメリア島だということだ。フロリダ半島の東岸には、岸からほんの少しだけ離れて、たくさんの島が並んでいる。それぞれ、海水浴場やゴルフ場のあるリゾート地となっている。 個人的には、何度かフロリダのビーチに行ったことがあるが、アメリア島と言うのは今回初めて聞いた。ジョン・グリシャムがモデルとして選ぶほどだから、良いリゾートなんだろう。

小説では、事件は一応の決着を見る。グリシャムは、この小説の登場人物を利用して同じ架空のリゾート地を舞台に新たなミステリーを発表している。それが”Camino Winds”。

ちょうど読み始めたばかりで、何も書くことがないが、第一作で作り上げた人物に感情移入しているので、最初からストーリーに入りやすい。第一作の主人公のメーシーも、スランプを脱して作品を発表して登場する。まだ、読み始めたところだが、ちょうど面白くなってきたところだ。

(ミステリーなので、書く内容に注意が必要で苦労する)