Adobeの進化

Adobeは、創業以来Appleのどの関係が深く、1980年代に誰も真似できなかったきれいな印字ができる技術をAppleに供給してきた。その後、IllustratorやPhotoshopなどのソフトウエアを開発して、デザイナーの要求に答えたり、動画編集ソフトのPremiereにより動画編集の分野にも進出している。

多分、一般的にAdobeと言えば、そのようなデザイン系の仕事のツールを提供する会社と思われているが、2009年にOmnitureを、2011年にDemdexの買収して、広告の制作から広告出稿までを管理できる会社に変貌している。Omnitureは、ウェブ解析の会社で、Demdexはオーディエンス分析技術を持つ会社だ。これらの技術を組み合わせて、広告の制作からターゲット選定、広告出稿までを一貫して行えるマーケティング会社になった。

直接関係ないが、パッケージソフトを止めて課金制のクラウドに移行した会社では最も早い会社でもある。以前からPhotoshopを使っていたが、2013年に完全に月額課金に移行したため、毎月お金を払っている。といっても1番安いPhotoshopが使えるPhotographer Packageだが。

話が脱線したが、マーケティング会社に変貌しているAdobeは、AppleとGoogleが、第3クッキーを使用したマーケティングを終わらせようとしている今、新しいマーケティング環境で、さらに成長を図ろうとしている。

インターネット広告の過去20年の歴史は、全てクッキーの上で成り立っていたと言える。第3者クッキーにより精度の高いターゲティングを行い、効率の良いコンバージョンが可能だったからだ。そして今、もっとも重要だった第3者クッキーに多くの広告主が別れを告げようとしている。

AdobeのReal-time Customer Data Platformというサービスは、広告主が自社の第1者クッキーの顧客データベースを構築し、分析するためのツールである。そしてこのツールは、顧客からの同意を取ることによって、データを集め、分析を行うツールへと進化している。

広告主が、自社の顧客データを分析することにより、ウェブサイトで最適な顧客体験が提供でき、顧客の行動の予測もできると言うようにAdobeは言っている。今後のマーケティングはGoogleやAppleが集めた大量の顧客データを使うのではなく、多くの広告主は自社の顧客のデータをベースにして、データベースを積み上げて、マーケティングの企画実施を行うことになる。効率が悪いと言えば悪いのだが、プライバシーや透明性が最も重要な今の社会において、それが最も効率的なマーケティングの手法になると思われる。

Adobeの進化の歴史を見ていると、優秀な経営者のビジョンによって会社は繁栄するか、衰退するかが決まってくることがよくわかる。10年以上前にAdobeの将来の姿を考えて、広告の制作から、ウェブの分析、顧客体験の最適化や広告の出稿までを行う会社になる判断は、一見ロジカルではあるが、飛躍もあり、なかなかできるものでもない。当時考えられていた業種の壁を超えているからだ。それを考えて実行に移したAdobeと言う会社は大したものだ。もしそういうしたビジョンがなければ、Adobeと言う会社は、今もお絵かきソフトの会社の一社と言うことになっていたはずだ。

今のAdobeは年に1兆円以上の収益を上げ、その時価総額も30兆円近い会社である。