クッキー時代の終焉と広告費

2020年の日本の広告費は、コロナ禍の影響受けて、前年比88.8%の6兆1,594億円となった。これはリーマンショックと東日本大震災の後の落ち込みから8年かけて回復してきた成長分がすべて帳消しになった計算となる。

2020年の広告費は全体では、前年比88.8%だが、マスコミ四媒体広告費は前年比86.4%と大きく減少した。一方、インターネット広告は前年比105.9%と成長率は減少したが、成長は続いている。

2019年にインターネット広告が、テレビ広告を抜いたと話題になった。そして、2020年にはインターネット広告の総広告費に占めるシェアは36.2%と、マスコミ四媒体広告費のシェア36.4%とほぼ互角となっている。

インターネット広告の成長は、私たちのメディア接触の変化によるものが大きく、スマホを中心に、ほとんどの時間をインターネットを経由する情報に接触している。NHKが発表した国民生活時間調査でも、インターネットに使われる時間が伸びている。少し驚くのは16歳から19歳のテレビの接触時間だ。この年代の53%は1週間に1度もテレビに接触しないと言う。

インターネット広告の急速な成長は、このようなメディア接触の変化の結果だ。だが、もう一つの理由は、インターネット広告の高いターゲット捕捉精度である。その精度を支えているのが、第三者クッキーの様な個人のインターネット上の行動履歴を捕捉する技術だ。

しかし、この第三者クッキーによる広告配信の時代は終わろうとしている。Googleは第三者クッキーを来年にはサポート終了としている。そして、AppleはiPhoneユーザの識別方法であるIDFAの広告への情報共有可否をユーザーに選択させる仕組みをすでに導入ずみだ。IDFA (Identifier for Advertisers) とは、Appleがユーザーの端末のIDで、広告主はこのIDを使ってユーザーの行動履歴を捕捉して、広告を配信することができる。

iOSの四月のアップデイトのiOS14.5以降では、ユーザーはIDの共有の可否をアプリ毎に選ぶことができる。調査によれば、回答者の54%が、共有を不許可にしたという。

その結果、広告主がiPhoneユーザーのデータを取得する能力は大幅に影響受けている。

別の調査の2021 Consumer Trends Indexが世界の5000人の調査の結果を発表している。過去の購入の記録から、別のものを推薦されるのは良いと答えている人が73%いる一方、66%は、ウェブでの行動履歴により、広告に追いかけられることを気味悪いとしている。一般的には、多くに人は自分のウエブでも行動履歴はプライバシーと考えて、共有することを望まないし、他人から覗かれたくないのだ。

予定されている来年の第三者クッキーの終了とIDFAによるトラッキングの制限により、広告ビジネスが大きく変わる。今後は、このような技術に頼るのではなく、20数年前にセス・ゴーディンが提唱したように、広告主は顧客からパーミッションをとって、コミニケーションを行うと言うことが主流になると思われる。

その際に、広告の役割は今とは違ってくる。行動履歴ターゲティングのような広告は、見込み客を特定し、最適なタイミングで広告を配信することができたが、行動履歴トラッキング終了後の広告は、その精度が同じようなことができない。すでに広告主が顧客からパーミッションをとってコミュニケーションを行う環境で、インターネットの広告をどのように使うかと言うことについては、これから様々なトライアルがなされるだろう。それが結果としてインターネット広告の成長にどのような影響が出るのか現時点ではまだわからない。