広告付き配信サービスに関する調査

テレビ放送は、映像配信サービスが増えて、大きく変わってきている。家庭で使っている機器は同じだが、そこには様々なサービスから映像が送られてくる。かつては、放送局から電波で送られてくる番組を受信するのみだったが、今はインターネットを通じて送られてくる選択肢が豊富にある。

広告の入らないNetflixのような定額映像配信サービスもあれば、広告が入る無料配信サービスもある。

広告が入る無料配信サービスについての調査がアメリカで、調査会社のHarrisと広告業界紙のAd-Ageによって行われた。

調査対象者の80%は広告が入る事は前提として受け入れているが、30分の番組に、広告は30秒のものが1回か2回までしか受け入れないと回答している。4回以上の広告を受け入れる人は7%しかいない。

しかし、この数年で数多く登場した広告付き映像配信サービスは、通常のテレビよりも広告が少ないことを売りにしているが、それでも、この調査対象者の期待よりも多い数になっている。例えばNBC UniversalのPeacockでは、30分あたりCMを5回、Warner MediaのHBO Maxでは30分に4回のCMが入る。これは、今回の調査対象者の期待から大きく外れている。

また広告の回数はプラットホームごとに違うが、それより問題になっているのは広告の内容だ。88%の調査対象者が、1度の視聴で同じ広告を何度も見ることを指摘している。これは、まだ広告主の数が少ないことも影響していると思われる。

広告のタイミングも、多くのアメリカ人は問題にしている。82%は番組の途中で広告が入るよりも、番組の前に入ることを望んでいる。これについては、当然のことだが、広告主は番組の途中に入ることを望むだろう。

今回の調査で、56%の回答者が広告を見るタイミングを選べれば、より多くの広告に注目すると答えている。しかしながら、広告付きの配信サービスではこれは難しい要求だろう。

別の質問では、55%が商品のサービスの割引などがあれば、広告に接触すると答えている。また53%は広告なしで番組を見るために、1度は広告に接触する用意があると答えている。これについては、プラットホームと広告主で対応して解決できる可能性があるかもしれない。

今回の調査で、明らかになっているのは、アメリカの家庭では63%が少なくとも1つの配信サービスを利用し、55%は通常のテレビも見ているということだ。そしてさらに、配信サービスを利用している人の半分以上は4つ以上の有料無料の配信サービスを利用している。

これがアメリカの今の状況だが、日本でも有料無料の配信サービスが増えていることから、多くの時間が配信サービスに奪い取られ、通常のテレビの視聴時間はどんどん減っていくことが予想される。この状況を踏まえて、広告主や広告業界は、広告付きの配信サービスの可能性をもう少し追求すべきなのかもしれない。アメリカの調査の回答にあったように、多くの視聴者は無料のサービスであれば、広告は入る事は、方法はともかく受け入れている。

PayPalによるPinterest買収

PayPalがPinterestを買収しようとしているようだ。その価格は450億ドル、約5兆円だ。これは現在のPinterestの株価の総額の25 %増となる。この取引が成立すれば、Salesforce.comがSlackを買収した277億ドルを超えて、今年の最大の買収となる。PayPalは、2015年にeBayから独立した会社で、その市場価値は3060億ドルもある。

PayPalとPinterestと言う不思議な組み合わせと最初は思った。しかし、考えてみれば支払いの方法は多様化しており、PayPalが創業した頃のとは様相は大きく変わっている。競合会社の登場、スマホによるQRコード決済や今後のブロックチェーン決済など、インターネット上の決済の形は大きく変えつつある。

PayPal自体も、競争にさらされて危機感を感じているのだろう。この決済市場の防衛のために、日本のPaidyやスウェーデンの iZettleの買収を最近行なっている。

今回のPinterestの計画は、決済のさらに川上の購入の場の買収と考えられる。Pinterestは他のソーシャルメディアに比べると、物品の購入に近い位置づけにある。Pinterestは、インターネット上にある写真にピンを立てるで自らのボードを作っていくサービスだ。Pinterestは、さらにショッピングの機能を付け加えて、購入できるピンを明示するようになっている。

ユーザーは、Pinterestに表示される写真を見て購入できるピンがあれば、そこから直接買うこともできる。この機能は、主流になりつつあり、Instagramを始め、多くのソーシャルメディアが直接購入できるような仕組みを導入するようになってきている。そこで登場するのが、PayPalによる決済と言うことなのだろう。

そう考えると、決済の市場を守るために、川上の購入の場を自ら所有する形での垂直的なビジネスモデルを構築しようとしている。

かつては盤石だと思われたPayPalだが、すでに様々な競争にさらされて、今回の買収も、事業拡大と言うよりも、本業の防衛と言う色彩が強いのだろう。Pinterestの月間アクティブユーザ数は、2020年7月の発表によると4億人を超えていると言う。これをPayPalの決済の顧客として取り込むことが第一の目的だ。かつては、企業は資産で買収されたが、今はその顧客が資産だ。

Pinterestには楽天が出資をしているのは有名な話だ。その出資比率は明らかにされていないが、かなりの大きな割合を持っていると考えられている。このためPinterestが2019年に上場した際には楽天の株も高値を付けた。もしPayPalによるPinterestの買収が成立した際には、楽天にも大きな売却益が入ることになり、携帯電話ネットワークの設置に力を注いでいる楽天にとっても資金的な余裕ができるのだろう。このニュースで楽天の株価も上がっているかもしれない。だが、個別株に興味はないので確認はしない。

川崎ブレイブサンダースのSNSマーケティング

日経にBリーグの川崎ブレイブサンダースがSNSを活用してマーケティングに成功している記事が出ていた。SNSの特性とコンテンツのアイディアが紹介されており、スポーツ団体でなくても参考になる良い記事だ。

Bリーグは新体制が発足して常に6年になるが、各地で徐々に元気を集め、試合平均では4000人から5000人の観客を集めている。そもそも、バスケットボールは競技人口の多いスポーツなので当然といえば当然だが、Bリーグ発足までは、内部のゴタゴタであまりうまく行っていなかった。

Bリーグの発表ではコロナ禍前のの2019年―2020年シーズンでは280万人の観客を集めたと言うことだ。競技人口が200万人を超えていることを考えるとまだまだ、成長の余地はある。Bリーグのなかでも、千葉ジェッツは様々なマーケティング活動が成功して何年もリーグトップの観客動員数を達成している。その話も面白そうだが、今回の日経の記事に載っていたのは川崎ブレイブサンダースで、SNSやデジタルマーケティングを活用して平均来場者数は2018年にDeNAが東芝から経営権を買収しした後1.5倍まで、観客数を伸ばし、リーグ2位になったという。それ以前は3位だから、驚異的な伸びとまではいかないが、着実に成果を上げていると言う事のようだ。

コロナ禍による入場制限のために、現在はキャパの半分しか収容できないために観客動員数が減っているが、ホームゲームの平均稼働率は制限人数の90%を超えてリーグ1位となっているという。

この原動力はソーシャルメディアマーケティングと言うことで、Bリーグ・アワードで、2020から2021年においてソーシャルメディア最優秀クラブを受賞した。

日経の記事によれば、Twitterのフォロワーは7万1,000人、Instagramは4万3,700人、Facebookは9,700人、YouTubeは8万8,600人となっていると言う。Facebookの人数だけが、他と比べて少ないのは、Facebookの利用者の平均年齢が高く、あまりバスケットボールに関心がない層が中心ということと、川崎ブレイブサンダースの戦略的なSNS活用の結果と考えられる。

この記事で、川崎ブレイブサンダースのデジタル戦略として紹介されていたSNSの特性に合わせた使い分けが興味深い。

SNSを行動面のロイヤリティーと感情面のロイヤリティーでマッピングして、その特性に合わせてSNSを活用している。YouTubeやTikTokは行動面、感情面どちらでも低い位置にあり、認知拡大や新規ファン獲得に活用している。LINE、 Twitter、 Instagramは行動面、感情面のロイヤリティーどちらも中位で、ファンへの情報共有やプレゼント企画に活用している。そしてFacebookとFantsは行動面、感情面のロイヤリティーがどちらも高く、オンラインサロンとして熱狂的なファン向けと選手との交流に活用していると言うことだ。

このSNSの使い分けは感覚的には理解できる。しかしこのように明確に整理されたものを見たことはないので非常に新鮮で、目を開かされた。

スポーツマーケティングでは、熱いファンの対応が重要であるのと同時に、新規を、どう開拓するかが重要となる。川崎ブレイブサンダースは、YouTubeやTikTokを使って新規獲得認知拡大を意識して使っている。これは、この動画共有メディアの特性やコンテンツの特性を考えると非常にしっくりくる。

記事ではバスケットボールとYouTubeの相性の良さが紹介され、指摘されている。ブレイブサンダースのYouTubeチャンネルは、2016年に解説されたが、登録者は、たった3000人程度だった。それがDeNAが買収して、新たに様々なコンテンツを投入した結果、今の9万人近い登録者数を達成している。

コンテンツの例としては、「~してみた」といった挑戦系動画とか、選手のプライベート動画などエンターテイメントに徹した動画を投稿したと言うことだ。

さらに川崎ブレイブサンダースは、YouTubeのコンテンツを強化するために、クリエイター・インフルエンサー・マネジメントのUUUMとパートナー契約を結び、UUUM所属のはじめしゃちょーや水溜りボンドのカンタなど人気YouTuberとのコラボ動画も制作していると言うことで、これらも新しいファンの獲得につながるコンテンツとなっているのだろう。

また吉本興業との連携もあり、吉本所属のタレントのとのコラボ動画を制作して、バスケットボールの枠を超えたような動画を制作して、認知の拡大を図っている。これも、スポーツと言うコンテンツの強さと限界を知り、それを超えて、一般の人まで認知を拡大しようとする試みだ。吉本芸人のようなタレントとのコラボと言うのは非常に良いアイディアだと思う。実際ラグビーの仕事をしていた時も、実現はできなかったが吉本興業とは様々な取り組みについて議論をしたことがあった。予算や優先順位の問題で、組織内での調整がうまくいかず実現できなかったことは残念だった。

記事の中では、チケットの新規購入者の50%がYouTubeを見ていると言うデータがあると言う。駅の交通広告の効果は高くても20%と言うことで、その差は2倍だと言う。これは、YouTubeと言うメディアの巨大さと、動画によるコンテンツの魅力と言う意味で、非常に理解しやすい結果だ。新規顧客を獲得するようなプロモーションでは、写真と試合の情報を提示するだけでは魅力を提示することが難しいであろう。

川崎ブレイブサンダースの行っているプロモーションは、SNSの特性を理解した上で、コンテンツの制作に力をいれていて、有効な戦略だ。スポーツのマーケティングは、熱狂的なファンの維持と新規の獲得という2つの戦線があり、これの同時進行が重要なので、以前より考えていたことと同じで納得できる。一般企業にも参考になるSNSマーケティングだ。

Amazonが広告主向けキャンペーンを実施

Amazonが広告事業についての、広告主向けキャンペーンを行っている。NYのタイムズスクエアに巨大なLED広告を設置するなど、大規模なものだ。その広告コピーは「Your bland, their world」。NFLの放送権を取得すなどAmazonの持つプラットフォームに注目が集まっているから良いタイミングだ。

アメリカの国技のアメリカンフットボールの木曜日に行われる試合について、2023年からは普通のテレビでは視聴できなくなる。Amazonが放送権を独占的に取得した。

NFLの放送権は、日曜日の昼間の試合はCBSとFOXがデジタル権も含めて持ち、NBCが日曜日の夜の試合。月曜日の「マンデー・ナイト・フットボール」ESPNが以前より持っていて、ABCでの同時放送とオンラインを含めて放送している。今回、Amazonが契約したのは木曜日の試合で、契約は2023年からの10年間だNFLの権利は今まではテレビ局が取得して、デジタルに展開するケースもあったが、オンライン・ストリーミングの会社が独占的に取得するのは初めてのケースだ。

アメリカンフットボールと言うアメリカにおける重要なコンテンツを、ストリーミングで見ると言うことになると、視聴者の習慣が変わる可能性がある。ストリーミングでNFLを見るようになると、他のコンテンツもストリーミングで見る習慣が始まってゆくのだろう。

Amazonは以前より単なる物販業ではなくなっている。また日本では権利取得の関係で見られないものもあるが既にAmazon Prime Video、 IMDb TV、ファイアTV、Twichという、多くのストリーミングサービスのチャネルを持つ。これらのストリーミングサービスの広告事業や、オンライン販売のサイトでの広告事業も含めて、2021年第二四半期の広告の売り上げは80億ドルに達している。これは前年同期の83 %増と言う驚異的な伸びだ。市場の規模が違うとは言え日本のテレビ局の広告売り上げ額は、昨年年間で1番多い日本テレビでも2863億円だから、四半期で9000億円近い売り上げのアマゾンは、日本テレビの年間広告売り上げの3倍以上を四半期で稼ぐと言うことになる。つまり年間では12倍以上だ。

Amazoはすでに広告事業でも、GoogleとFacebookに次ぐ位置にいる。今回のキャンペーンは、これにさらに広告主を呼び込むためのものだ。

今はアメリカに限定されているAmazxonの広告付きストリーミングサービスが、日本を含めて海外まで展開されるとこの売り上げはさらに伸びると思われる。

TikTok Shoppingイベント

TikTokは今週、TikTok Shoppingと言う企業向けのイベントを開催した。このイベントは、TikTokが用意している企業向けの販売のツールや機能を紹介するイベントだった。それらは、販売できる店舗機能、購買ができる商品にタグをつける機能、ライブショッピングイベントの開催等の説明だ。すでに多くの企業がこれらの機能を利用している。またウォルマートとTikTokが組んで、ライブショッピングのイベントを実施し、今後これをさらに拡大していく方針と言うことだ。

InstagramやYouTubeなどのソーシャルメディアの先行者は、すでに初期の機能を超えて、広告やショッピングのプラットフォームの色彩が強くなっている。これは当然、広告を収入源としているので、様々な広告のバリエーションを取り入れていくのは当然のことだ。問題は、それがどの程度かと言うことだ。広告や企業に関連するものが増えてしまえば、そのプラットフォームは魅力を失うので、ブランドイメージを失わずに、適度な収益を上げられる広告や商品紹介があると言うのが望ましい形なのだろう。

しかしTikTokは、商品の販売がすでに自然に行われているようだ。そこで、TikTokも、すでに進化しているTikTok上の経済活動の一部を狙って今回のイベントを開催している。

すでに商品の紹介はTikTokに溢れている。多くの投稿者が商品紹介を行い、それによって実際に購入がされている。アマゾンは# TikTokMadeMeBuyItと名付けた、TikTokで紹介された商品を集めるページを追加した。この#をつけた動画の再生回数は合計で46億回を超えていると言う。

TikTokの月間アクティブユーザー10億人が、TikTokの中を回遊して、見つけた商品を実際に買っている。しかも多くの場合、この商品紹介は投稿者が実際に買ったものを紹介しているだけで、企業の広告であったり、ステマの1種であると言う事はないと多くの関係者が指摘している。

今回のTikTokのイベントは、既にできて上がりつつあるTikTok経済圏が、TikTokの手の届かないところで成立するのではなく、自ら、収益を上げる仕組みに変えていこうとする試みの1つである。

これは珍しいことではなく、すでに他のソーシャルメディアを行っている。例えばYouTubeは言うYouTuberのマーケティングのルールを明確にして、彼らが商品を直接販売することを可能にしている。FacebookやInstagramでもプラットフォーム内から販売でできる仕組みを取り入れた。

ソーシャルメディアは、どこも販売の機能を取り入れる。しかし最終的にはそのプラットフォームのブランドイメージに限界があり、販売される商品はブランドイメージに縛られている。Instagramは化粧品、ファッション、アクセサリーに強いだろうし、YouTubeと言えばガジェット系が多くなるだろう。その点で言えばTikTokでは、掃除動画が人気があるように、掃除用の日常品から、様々なものが対象になるイメージがある。しかし化粧品は可能でも、ハイファッションまではどうだろうか。

カテゴリーはともかく、TikTokが目指しているのは、ウォルマートとの実験のように、様々なものをプラットフォームの中で売る販売店のような姿をイメージしているのではないだろうか。デジタル経済の中で、強い力を持つソーシャルメディアは、クッキー廃止で広告が不透明な中、販売の中核になろうとする努力は続く。

TikTokの「クリンフルエンサー」

人に受けるコンテンツと言うのは、ある程度わかっていると思っていた。昔、出版社の人に、雑誌の売れ行きが悪い時はダイエット特集を行うと、また売れると聞いたことがある。また時期や環境によっても、これは変わる。今で言えばコロナウィルス関係の記事は受ける可能性が高いだろう。つまり、ある程度、受けるコンテンツは、多くのコンテンツクリエイターにとって、経験的に知られていると思っていた。

しかし、今朝読んだ記事は、別のコンテンツの可能性を紹介していた。それはニューヨークタイムスのTikTokで人気人気になっているコンテンツの記事だった。

TikTokの人気コンテンツと言えば、ダンスや歌が中心だ。しかし、1億回以上の再生回数を記録したのはプールのクリーニングの動画だ。プールの掃除をする人が、日常のプール掃除の動画を投稿して、1,100万人ものフォロワーを獲得している。彼は、「クリンフルエンサー」と言うカテゴリーに含まれる投稿者だ。もちろん、「クリンフルエンサー」は、クリーニングとインフルエンサーの合成語だ。

様々なものを掃除をする作業の紹介ビデオが、TikTokにはたくさん投稿されていると言うことだ。カーペットの汚れを落としたり、歩道を洗浄したりとと言う動画が人気を集めており、そのような動画を投稿する人を「クリンフルエンサー」と言うらしい。

人気の秘密は、単純に掃除のコツを知りたいと言う機能的な目的を持つ人もいる一方、それ以外の目的で見る人もいるといことだ。

ロンドンの大学の学者によれば、掃除の動画には、最初と最後の違いについての、明確のインパクトがあり、それが動画の魅力になっていると言う。それが、人を惹きつけると言うのである。同様の例としてフィットネスの、ビフォー・アフターの動画をあげている。

さらに、この学者が言っているのは、プールのクリーニングの動画は、見る人の心を落ちつかせて、惹きつける効果があると言う。それは汚いプールがきれいに生まれ変わるのを見て、満足感と達成感を感じるからだと言う。それが、動画の魅力になっていると言うのだ。

別のシェナンド大学の教授によれば、少し大げさかと思うが、お掃除動画の魅力は人類の進化に関係があると言う。人類は、何十万年にわたって、人が手が動かすのを見て、スキルを習得をしてきた。そのようなメカニズムが、脳に組み込まれているので、人が体を動かすのを見る事は、脳のその部分が刺激されて、目を離すことができなくなると言う。このようなことは、以前は信じなかった。物質としての人間は、新しい物質から生まれてくるので、過去の行動が、新しい個人に影響を与えると言うことは、あり得ないと思っていた。この考えが変わったのは、ユバリ・ノア・ハラリの一連の著作を読んだからだ。我々の行動や思考、反応は、狩猟時代に通じると信じることで説明できると思うようになった。だから、この手作業をみることに惹きつけると言う説もある程度、同意できる。

同じ教授によれば、プール掃除のビデオは、自律感覚経路反応を起こすビデオの音声に似ていると言う。自律感覚経路反応とは、人のささやきを聞いたり、紙やプラスティックの包装にシワが寄ったりするようなある種の出来事に反応して、脳がうずくような感覚のことだそうだ。このような反応を引き起こす、画像や音声を含むビデオが、ドーパミンやオキシトシンを含む脳の部分を活性化させると言う研究結果が発表されている。

この部分は確かに同意できる。プールの掃除に使うような薬剤を混ぜるような音が出る動画が見ていて、私も心地よく感じた。映っている内容は単に薬剤が混ぜられているだけなのだが、その音が非常に心地よく感じられたのだ。なぜか、不思議な感じがした。

このプールクリーニングの動画が人気を集めると言うことを知って、コンテンツの可能性は、ダイエットだけではなく様々な可能性があると言うことを考えさせられた。

TikTokが広告主と投稿者のマッチングを開始

トランプ政権時代には、TikTokの話題といえばプライバシーの問題であったり、それに関連する米国資本への移行であったりとした。しかしバイデン政権になると、その話は全く消えてしまった。

そして、TikTokはパンデミック時代にも引き続き人気があり、流行の発信源になっている。全世界の月間アクティブユーザは、現時点で10億人を超えている。しかもこのユーザは非常に若く、10代が中心だ。

TikTokと若いそのユーザーは、数多くの流行を生み出し、新しいスターを作り出している。TikTokで人気に火がつき、グラミー賞受賞したLil Nas Xはその1人だろう。また歌手のWalker Hayesは、レストランチェーンのApplebee’sの名前を入れた曲に合わせて、娘と踊る動画を投稿した。その動画に人気が出て、Applebee’sは、その曲を使ったテレビキャンペーンを実施している。それ以外にも、商品が登場するたくさんの動画が人気になったりしている。

商品が紹介されたりして話題になることがあるが、TikTokはそのような動画から収入を得ているわけではない。TikTokの収入源は主に広告である。収益の多様化のために、サブスクリプションや投げ銭もテストを行っているが、どのようなビジネスになるかはっきりしない。

そのTik Tokの米国内の広告収入は、調査会社eMarketerによると、13億ドルにも満たない。これは、Twitterの22億ドル、LinkedInの26億ドル、FacebookとInstagramの480億ドルであるのに比べると、かなり見劣りする。

広告主がTikTokに広告を投下することに躊躇するのは、10代の若いユーザーたちが投稿する可能性のある問題のあるコンテンツと同時に広告が表示されることを怖れるからだ。日本では一時、バイトテロと言われる好ましくない行動をソーシャルメディアに投稿することがあった。TikTokで同様のことが起こる可能性が高いと、多くの広告主が考えている。

だから、TikTokが10代に人気があっても広告メディアとして使用するのに躊躇する広告主が多い。この問題に対処をするために、TikTokはAIと人間を使ってコンテンツの内容を分析して、対応する仕組みを発表している。

そして広告に関しては、広告主と投稿者の間を結びつける機能を果たす自動システムを導入すると発表した。これにより、広告主は適切なコンテンツの投稿者と結びついて、Tik Tok上にコンテンツとして商品の露出ができる。言ってみればタイアップ広告のようなものだ。投稿者も収入を得ることができ、TikTokももちろん収入を得る。話としては三方良しの考えだが、果たしてどうなのだろうか。

TikTokは、コンテンツのリスクの問題もあり、また昨年はトランプ政権の攻撃、今年は中国政府がIT企業を厳しく管理しようとしていることから、広告主もリスクをまだ感じているものと思われる。新しい取り組みが効果を上げるかどうかは、来年にならないとわからないだろう。

「売らない店」

日経に大丸松坂屋が「売らない店」を10月より出店すると言う記事が出ている。「売らない店」は、すでに丸井が始めているので、珍しいことではない。しかし、大手百貨店が同様の取り組みを始めたと言うことで記事になったようだ。

どちらの「売らない店」も、D2Cブランド(ダイレクト・ツー・コンスーマー)の展示だ。

D2Cブランドは、メーカーやブランドが小売を通さず、自ら直接、エンドユーザーに販売するビジネスモデルで、単なる直販というより、強いブランド戦略をもち、独特の世界観を持つ企業だ、

大丸松坂屋では、D2Cブランドが展示を行い、大丸松坂屋の店員が商品説明は行うが、販売はしない。すでに「売らない店」を展開している丸井でも、D2Cブランドの「Fabric Tokyo」のコーナーでは、採寸とサンプル生地の確認はできるが購入はできない。客は、採寸結果とサンプル生地の確認をもとに、自分でオンラインで注文する。

これは、「ショールーミング」と呼ばれる実店舗の販売能力の喪失と言う現象を説明したマーケティング用語を、実際にビジネスにしたと言うことになる。「ショールーミング」では、実店舗は販売しようとしているが、商品価格等をオンラインで調べた客が、実際の商品の質感や手触りを調べるためだけに来店すると言う購買のスタイルと言う。自らの販売努力がショールームとして使われてしまうという悲しい現実を示す用語だ。

商品の価格や手軽さと言う面で、販売がオンラインに移っていく現状の中で、実店舗を持つ百貨店が、この「ショールーミング」に積極的に関与すると言うのも不思議な現象だ。しかし実態は不思議を越えて、現実の厳しさを示している。つまり実店舗は既に販売すると言う能力を失いつつあり、D2Cブランドのようなオンライン企業のショールームを運営するサービス業に転換したと言う事になる。販売業から、B2Bのサービス業への転換だ。

もちろん丸井にしても大丸松坂屋にしても、店舗の全てが「売らない店」になっているわけではない。戦略としては、実店舗で見られないD2Cブランドの商品を展示し、集客を行い、自らのブランドイメージに構築に利用する目的があるものと思われる。当然目的は、他の売る店の販売増である。

オンラインショッピングが普及するにつれ、実店舗を持つ企業は、厳しい状況に追い込まれる。「売らない店」のような形で、実店舗を持つ強みを生かした別のビジネスを考えていく必要がある。その1つが、D2Cブランドに対する「売らない店」としてのショールーミング・サービスだ。同様のオンラインと実店舗の隙間に起こるビジネスチャンスをどう見つけるか、百貨店の今後の挑戦だ。

OTTサービスとテレビ放送の今後

日本でも、アメリカを典型に全世界でも、ストリーミング・サービスの普及が、パンデミックを機に急速に普及した。これらのストリーミング・サービスは、技術的にはOTT(オーバー・ザ・トップ)に分類される。ビジネスモデルで、分類すると3つになる。広告が入るか入らないかで分けると、2種類。

広告の入るOTTサービスには、広告付きオンデマンド型のAd-Supported On Demand(AVOD)と、無料の広告付きストリーミングTVを意味するFree Ad-supported Streaming TV(FAST)がある。

広告が入らず、有料課金のみで行うビジネスはSubscriber-supported Video On Demand(SVOD)と呼ばれる。

整理すると以下のようになる。

  • Ad-Supported On Demand(AVOD)
  • Free Ad-supported Streaming TV(FAST)
  • Subscriber-supported Video On Demand(SVOD)

Ad-Supported On Demand(AVOD)は、日本では「TVer」や「GYAO!」、アメリカには「Roku Channel」や「Tubi」がある。ユーザーは、オンデマンドでコンテンツを視聴できるプラットフォームで、広告もついている。また、YouTubeのような動画共有サイトもこれに分類される。

Free Ad-supported Streaming TV(FAST)は、通常のテレビ放送に近いもので、中に広告が入ってくる。アメリカでは、「Pluto TV」や「Xumo」がある。日本では、思いつかない。まだ、この形式でストリーミングを行なっているサービスはない。

最後はSubscriber-supported Video On Demand(SVOD)で、Netflix、U-NEXT、Disney+、DAZN、Amazon Prime  Videoなどがある。最初に書いた通り、この3番目だけは広告は入らない。

SVODは、最もホットな争いが続いており、Netflix は2億人の加入者を2021年に突破した。Disney+ は、市場参入1年で全世界で9,500万人の加入者を獲得している。日本では、テレビの広告でDAZNの広告を見ることも多い。OTTサービスでは、このカテゴリーが目につきやすい。

広告付きのOTTサービスも、着実に視聴者を増やしており、広告主も広告費をOTTサービスにシフトしつつある。例えば、ディズニーでは、広告契約の40%以上がHuluを含むストリーミング・プラットフォームに割り当たと報じられている。また、NBCユニバーサルのストリーミングサービスのPeacockがシーズン前契約で5億ドルを受け取ったとう報道もある。広告費は、着実にストリーミングに向かいつつあるようだ。

今までのOTTサービスは、通常のテレビ放送と違い、ライブニュースや。スポーツ・授賞式などの大規模イベントには弱かったが、それも変わりつつある。DAZNがJリーグの権利を全て取り、さらにサッカー日本代表の全試合を放送するようになっている。また、アメリカでもAmazonは、Foxで放送されているNFLの「Thursday Night Football」のストリーミングを2022年に開始するそして、2023年シーズンから10年間の契約で独占的に配信することになる。つまり、2023年からはNFLの「Thursday Night Football」は、ストリーミングでしか見ることはできないのだ。

20世紀のメディアとして圧倒的に強かったテレビ放送は、OTTサービスにより、相対的に弱くなってゆく。問題は、どこまで弱いかだ。予想としては、ターゲット層やコンテンツ別に棲み分けてゆくのではないかと思っている。

スーパーボウルの広告は1本6億円

スーパーボウルは、アメリカのNFLの優勝決定戦である。アメリカで、最も注目を集めるスポーツイベントそして、毎年2月上旬の日曜日に開催される。この日は多くの人が、誰かの家に集まってテレビ放送を見ながらパーティーをする。

また、試合のハーフタイムに行われるハーフタイム・ショーも見所の1つで、毎年人気のあるアーティストが出演する。驚くのは、アーティストがノーギャラで出演すると言うことだ。つまりNFLスーパーボウルのハーフタイム・ショーは、権威があり、それに出演することが名誉であって、お金ではないと言う事のようだ。

スーパーボウルは、アメリカ国民のお祭りであるが、また、広告業界にとっても最大のお祭りとなる。テレビは4大ネットワークが持ち回りで、全国放送する。

そして、スーパーボウルの放送は、普通はその年の最高の視聴率を取る番組となる。そのために、このスーパーボウルで放送される広告は毎年大きな注目を集める。広告主や広告会社は、長い時間をかけて、この年に1度の広告業界のお祭りに、放送する広告の制作を行っている。

放送後には、様々なメディアが、その年のスーパーボウルの広告について批評を行うなど、高い注目を集める。スーパーボウルの広告は、業界関係者だけではなく、広く国民が広告のクオリティーについて評価するような広告イベントでもある。

スーパーボウルの広告で有名なのは、1984年の第14回スーパーボウルで放送されたAppleの「1984」だ。この広告は、リドリー・スコットにより制作され、個人的な意見では20世紀を代表する広告である。1984年のMacintoshの新発売についての広告キャンペーンの一環として企画された。当初スティーブ・ジョブスはスーパーボウルで、このCMを2回放送しようとしたが、あまりにも高価なので取締役会の反対により1回に減らされたそうだ。

当時のAppleに取って、高価な広告だったようだ。MacintoshはAppleにとって重要な商品であり、このコンピューターの成功が今日のAppleの礎となっている。そのデビューの舞台として、スティーブ・ジョブスが考えたのはスーパーボウルだったわけだ。当時の、パーソナル・コンピューターが広いマーケットを持っていなかったことを考えると、すごい発想だ。それだけ、戦略的な商品だったのだろう。もちろんGUIなどの画期的な商品ではあるが、スーパーボウルで放送された広告のインパクトも大きいと個人的には考えている。

そのスーパーボウルは、来年2月7日にカルフォルニア州イングルウッドのSoFiスタジアムで開催される。ロサンゼルス・チャージャーズとロサンゼルス・ラムズの本拠地として知られるスタジアムである。

今回の放送を担当するNBCはすでに広告の80%を販売したと言う。このCM枠は30秒で、毎年高騰を続けている。Appleの1984の頃は、約1億円程度だったと記憶しているが、今ははるかに高い。しかし、2022年は今年と同程度の約6億円と言うことだ。パンデミックの影響で、広告費の捻出が厳しい業界も多いからだ。しかし、毎年、CMを出し続ける大手広告主や、新興企業も多く、すでに80%も売れていることに驚く。

しかし、4ヶ月で残りの20% をCBSは販売しなければいけない。通常このような場合には、最後の何本かが売るのに苦労するものだ。NBCの広告の営業担当者はこれから必死で売るのだろう。アメリカはワクチンの接種も進まず、まだ毎日2,000人もの死者が出ている最中で、景気の問題もあり、すべてを売り切るのは大変だろうと人ごとながら心配なる。