火曜日, 1月 18, 2022
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テスラの好調の要因

様々な製品の納期遅れが発生している。そのほとんどの理由は半導体チップの不足が原因であると言うことだ。

自動車産業も例外ではなく、多くの自動車会社は半導体チップ不足のために生産を停止している。アメリカでは工場が停止しているため、多くの人の生活にも影響が出ているようだ。自動車のディーラーには車がなく、既に完成している車については値上がりもしていると言う。

そんな中で、問題がなく生産を続けているのはテスラだ。テスラは2020年の倍の936,000台を2021年に販売した。多くの会社が、販売台数を大きく減らしたことに比べて対照的な結果になっている。

テスラは、2021年段階で既にボルボとスバルを販売台数で抜いた。2022年にはベルリンとテキサス州オースティンが稼働し、上海工場も製造台数を上げる予定で、200万台を売り上げると見込まれている。そうなるとすでにBMWやメルセデスの域に達する。

このテスラの好調については様々な分析をされている。そのいくつかの記事を読んだ感想としては、起こるべくして起こっていると言うことだ。

まず最初に言える事は、テスラはまだ小さな会社だと言うことだ。生産台数が100万台にも満たない規模と言うことで、サプライチェーンのコントロールも簡単だ。一方既存の自動車会社は、そういうわけにはいかない。例えばトヨタやフォルクスワーゲンは、年に1,000万台も生産する規模である。この規模のサプライチェーンマネジメントとレベルが違うと言うことがまず言える。

次に言える事は、テスラは車種が少ないと言う事。テスラのメインの機種の車種はModel3セダンとModel Yスポーツユーティリティビークルであり、サプライチェーンマネジメントはさらに簡単である。加えて、テスラは他の自動車会社に比べてオプションが少ないために、さらにコントロールが容易と言える。

3番目の理由は、ガソリン車とEVの部品の数の違いだ。ガソリン車は10万点の部品が必要といわれるが、EVではその数は2万点だ。この部品の少なさが生産ラインのコントロールを容易にしている。

以上の3つは、テスラの好調さの要因だが、これだけではない。最も重要なのは、テスラが半導体の設計からソフトウェア、バッテリーまで内製化していると言うことだ。自動車産業の初期においては、フォードの工場は、鉄鉱石を仕入れ、それから鉄を作って自動車を組み立てていた。フォードの工場の中で、すべての過程が垂直統合され、外部に依存すると言うことがなかった。その後、生産や資本の効率のために、水平分業に移行して、多くの部品を外部に頼ることになった歴史がある。

この発想は、既存の自動車会社にはビジネスの仕組みとして組み込まれており、今の自動車にとって、最も重要な半導体チップやソフトウェアも外部に依存している。このために、既存の自動車会社は半導体やソフトウェアの技術者を内部ではあまり雇っていない。

これに対して、テスラは基本的にソフトウエアや重要な部品を内製化している。例えば、バッテリーだ。2014年にテスラはパナソニックをパートナーに選んで、ネバダ州レノにバッテリーの工場を建てている。これにより、重要な部品であるバッテリーの生産のコントロールを自社が行うことができる。

さらに、重要なソフトウエアも同じだ。テスラでは半導体やソフトウェアの技術者を内部に雇用している。このために今回のような半導体不足が起こった場合に、テスラは手に入る半導体に合わせてソフトウェアのコードを書き換えて、手に入る汎用チップで代用して、生産を継続することができている。

一方、既存の自動車会社は社内にソフトウェアの技術者がいないために、外部の会社に半導体もソフトウエアも委託している。このために、たくさんの専用チップを必要とすることになり、それが手に入らないと生産がストップする。自社でソフトウェアのコードを書くことができないからだ。そのために、専用チップが1個不足するだけで生産ができなくなる。

テスラの場合には、自社の半導体やソフトウェアの技術者が、半導体チップの入手状況に合わせて、コードを書き換えるので、対応ができているということだ。

今使われている様々な機器は、基本的には半導体チップによってコントロールされている。それは冷蔵庫や電気炊飯器から車に至るまで同様だ。特にEVにおいては、車全体の価値のうちの30%がソフトウェアだと評価している記事もあった。

数年前には、テスラとイーロン・マスクが内製化にこだわっていることに対して批判的な意見があったと言うことだ。だがパンデミックが起こって半導体チップの不足が起こることになってしまったために、その内製化と言う決定が正しかったと言うことになる。

だが、それは現時点のたまたまの結果論だ。 

結果論ではなく、ソフトウェアの内製化と言うイーロン・マスクとテスラの基本理念は正しい。ガソリン車の魂がそのエンジンだとすれば、EVにおいてはソフトウェアが魂だ。そのソフトウェアを中心に置いて内製化を進めると言う事は、今回の半導体不足と言う問題が起こらなくても正しい。

これからの車は、ネットワークにつながって、様々な機能を果たす。単に移動だけの手段ではない。また、ファームウェアをリモートでアップデートして整備を行うと言うことが頻繁に行われる。これを全て社内で行えない会社と言うものは、魂のない会社となってしまう。

とは言え、2022年に200万台を売ることが見込まれているテスラは、これから、どのような会社になるのか。トヨタやフォルクスワーゲンのように高級車から普及車までのフルラインナップの会社を目指すのか、それともBMWやメルセデスのような高級車の会社になるのか。その目指す方向によって、生産やマーケティングも大きく変わってくるのだろう。

Shogohttps://leicaleica.jp
大学教授 研究テーマは、メディア、マーケティング、サブカル。趣味は、写真、海外テレビドラマ、ミステリ、写真。流行っていないもの限定の嗅覚で生きています。
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