金曜日, 5月 27, 2022
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iPod生産を中止と音楽流通

Appleが、iPodの生産を中止すると発表した。これで現在の在庫分だけで販売終了になる。

iPodは2001年10月に発売された。白い筺体に丸い輪の操作ボタンや裏側の鏡のような銀色が美しかった。発売と同時に1000曲も入る音楽プレイヤーとして人気が出た。当時は、白いコードのイヤホンがあちらこちらで見かけられた。それまでは、白いコードなどなかった。それはiPodを使っていると言う旗印のようなもので、おしゃれと考えられていた。

当時はシリコンミュージックと言う言葉で、フラッシュメモリーを使った音楽プレイヤーはたくさんの会社が出していた。iPodは、市場に最も遅れて参入したことになる。個人的には昔からのウォークマンつながりで、ウォークマンのシリコンミュージック版である、ネットワークウォークマンを何台も長い間使っていた。

それが数年後には、iPod miniが出た後で、iPodを使うようになった。それでも、iPodの白いコードのイヤホンを使う事は拒否して、黒いイヤホンコードのイヤホンを別に買って使っていた。その後、iPodを何台も使い、今も使っていないが何台か持っている。 

最初のiPodが東芝製の1.8インチのハードディスクを使っていた事は有名だ。当時は世界最小のHDDだった。個人的には、ここが重要で、ハードディスクを使っているような音楽プレイヤーは欲しくなかった。フラッシュメモリの方が安定しているし、しかもサイズも小さい。それがソニーを使い続けた理由だ。それでフラッシュメモリーになったiPod miniが出たときにSonyからAppleに移った。

それと、もう一つの、より大きいブランドスイッチの理由は、使い勝手だった。Sonyの失敗として語られていることの多い、iPodに負けた理由は、著作権管理を含むネットワークウォークマンのソフトウエアの問題だ。SonyはSony Musicと言う巨大音楽会社を参加に持っていたことが、結果的に敗因になった。Sonyのシステムの著作権管理のための仕組みが厳密だったのだ。AppleのiTunesでは、 MP3に音楽を書き出すことができたが、ネットワークウォークマンのシステムでは複製を作る事は認められていなかった。Appleでは、複製のMP3をPCにコピーして、PCで聴く事も出来た。この辺の使い勝手が勝負を分けたと思う。

伝説としてしか知らないが、スティーブ・ジョブズが音楽会社のトップと会って、iTunesの著作権管理も含めたシステムや販売方法を説明して了解を取ったという。それで、音楽会社の同意により、ユーザが使いやすい形を作ることができた。Sonyが負けたのは、ただルールを厳密に守ろうとしたことだけだった。

スティーブ・ジョブズもついていた。ちょうどその時期は、音楽業界がインターネット上の海賊版に悩んでいた時期だった。Napstarが猛威をふるい、音楽を世界中から、ただで集められると信じてられていた時代だ。そこに一曲99セントと言うダウンロード販売を持ちかけられたから、音楽業界としては乗りやすかったのかもしれない。

iPodは、発売以来4億5000万台売れたと言う。そしてそのiPodが、技術的にもデザイン的にも今のiPhoneにつながる。iPodがなければiPhoneは生まれなかったかもしれない。iPhoneの発売の時にスティーブジョブスは、音楽プレイヤーと電話とPDAを1つにすると言った。その意味では、iPhoneはiPodに電話の機能をつけたものだ。2021年のiPodの販売台数は300万台だと言う。一方iPhoneのほうは2021年だけで2億5000万台だ。

iPodの販売台数が減っているのは、iPhoneがiPodの機能を持っていることもあるが、それよりも大きいのは、モバイル通信のブロードバンド化により、音楽の流通が変わったからだ。ダウンロードからストリーミングに変わっている。すでに1曲いくらでダウンロードするビジネスではなく、Apple MusicやSpotifyのように月額定額制で、どんな曲でも選んでストリーミングすると言う方法に変わっている。音楽を所有する必要は無くなったのだ。

私自身も音楽を聴く際には、音楽をダウンロードするiPodではなく、iPhoneを使っている。しかも機種変更した以前のiPhoneは音楽専用プレイヤーとしても使うことができるので、Wi-Fiと一緒に音楽プレイヤーとしてまだまだ現役だ。

この状況考えると、それでもiPodが年間300万台も売れていると言うことに驚く。

AppleがiPodを発売してからの20年の間に世界が大きく変わっている。Appleは、今では世界で最も価値のある会社と言われようになった。たくさんの理由はあるが、音楽の面だけ考えてみても、一曲99セントでダウンロードを販売して手数料を稼ぐ、音楽の仲介業者から、自分でApple Musicと言う音楽サービスを立ち上げて、ユーザに月額料金を課金する一方、著作権者にはその分配金を分け与えると言うように、音楽の流通の中心の位置にいる。

Apple Computer Inc.がApple Inc.になったのは2007年だ。最初からそう考えていたのかどうかわからないが、ハードウェアを売るよりサービスの中心にいる方が良いと、どこかの時点で考えたのだろう。それが2001年のiTunes Storeから始まって、今のApp Storeと言うiPhone経済圏につながる。だからiPodの発売は今のAppleの成功物語の出発点だった。

Shogohttps://leicaleica.jp
大学教授 研究テーマは、メディア、マーケティング、サブカル。趣味は、写真、海外テレビドラマ、ミステリ、写真。流行っていないもの限定の嗅覚で生きています。
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