土曜日, 6月 25, 2022
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Netflixの広告付きプラン導入

今朝はNetflixのニュースで溢れかえっている。1つは、先月に続いて、300人のレイオフ行ったことで、もう一つは、広告付きプラン導入にあたって、GoogleやComcastと業務委託の交渉を行っているというものだ。

4月の第一四半期の決算発表でNetflixは10年間で初めて20万人の契約者の減少と、第二四半期での200万人の減少の見込みを発表した。以来、株価を急落している。個別の企業の株価をフォローしていないので知らなかったが、70%も下がったようだ。それまでが期待値があまりにも高く、異常だったのかもしれない。

この収益低下を受けて、コスト削減のための人員の削減を行った。そして、もう一つが広告が入る新しいプランの導入の決定だ。

Netflixは広告を絶対に入れないと創業者が強く主張してきた。だから広告ビジネスの経験者もいなければ、そのためのテクノロジーも社内にはない。それでも今年の第4四半期には広告付きプランを開始をすることになっている。このために、多くの企業と広告業務の委託交渉を行っているのだろう。

ちょうど、世界の3大広告賞の1つであるカンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバルが開かれていることもあり、広告関係者が数多く、カンヌに集まっている。今年はNetflixの共同CEOのテッド・サランドスが、Entertainment Person of The Yearに選ばれたこともあり、カンヌを訪問している。だから、カンヌでGoogleやComcastと交渉しているという報道がされている。

アメリカでは毎日300人程度の死者が出ているものの、すでに新型コロナウィルス感染症は過去のものとなっている。それよりもインフレの方が大きな脅威だ。この状況で、コロナ禍のステイホームのスーパースターだったNetflixは苦しい立場になっている。Netflixはコロナ禍で、急速に契約者を増やして2億人を突破した。

だが、伸びが止まったとは言え、まだ2億2200万人の契約者がいる。これが短期的に200万人減少するのは、大きな問題なのだろうか。契約者は増え続け、売り上げが増え続け、利益が増え続け、株価が上がり続けると言う資本主義の罠にかかっていないのだろうか。多少、契約者が減少したところで大きな問題ではないと考えられないのだろうか。ステイホームと言う僥倖がなかったと考えれば、元に戻っただけと言うふうにも考えられるはずだが、どうだろうか。

契約者数が下がったので、広告モデルを導入して、低価格の契約者を増やすことと、広告収入で利益を得る事を目指しているとしたら、それは今までの広告の入らないNetflixの、そもそものビジネスモデルの破壊にはならないのだろうか。

確かに、広告付きプランの導入によりNetflixは年間10億ドル以上の収益を得ることになると言うアナリストの分析もある。しかし、この分析によるだけの根拠があるのだろうか。10億ドルの広告の売り上げを上げるためには、Netflixの広告付きプランの契約者がある程度の数になる必要がある。別のアナリストの分析では、2025年までにNetflixの広告付きプランの契約者数は1億人を超えると言う予測もあるのも事実だ。しかし、その1億人はどこから来るのだろうか。一部は安くなったNetflixに広告付きプランで契約しようとする人もいるだろうが、多くは既存のNetflix契約者のダウングレードになるのではないだろうか。つまり共食いだ。

仮に1億人を超える契約者がいて、そこから広告収入が上がったところで、そもそもの月額契約料収益は大幅に下がることになる。この点を理解しないと、Netflixの本当のボトムラインを予測するのは難しいのではないだろうか。

もう一つは、コンテンツの問題だ。かつてスティーヴン・スピルバーグはNetflixが作る映画は映画ではないと指摘した。つまり映画館で劇場公開されるものが映画であって、ストリーミングで家庭で小さな画面で見るものは映画ではないと言う意見だ。これは、映画のある側面を捉えていて、スピルバーグらしい。しかし彼もその後コロナ禍で劇場公開が難しい状況もありこの意見を変えて、Netflixが制作する映画も映画であることを認めた。つまり大勢あるいはNetflixの払う莫大な制作費に日和ったとも言える。

しかし、これが、広告でその映画が中断される形で配信されるとしたら、ストリーミングの映画も映画だと言える映画監督は何人いるだろうか。Netflixは、この数年にわたってアカデミー賞の候補の作品や受賞作を製作した。それはNetflixと言う広告の入らないプラットフォームで配信されることがわかっていたからだ。その意味で今後もハリウッドの著名な監督がNetflixで作品を制作することを躊躇すると言うケースが増えるのではないだろうか。結果的には良いコンテンツが集まらずに、Netflixの契約者離れがさらに進む可能性がある。

確かにNetflixには数限りないほどのコンテンツが溢れている。しかし個人的には最近はあまり見るものもない。興味がわかないのだ。広告付きプランの導入により、著名な製作者が離れていくと魅力あるコンテンツも減少するかもしれない。

それよりも大きな問題は、既に制作されている作品だ。制作された段階では広告と一緒に視聴される事は想定されていなかったために、これに広告がついて配信されると言うことになると、制作したプロデューサーや映画監督は契約違反と主張することになるのではないだろうか。制作時の契約がどうなっているのかよくわからないために、どうなるかわからないが、契約によっては挿入される広告のレベニュー・シェアや、制作費の追加支払いを求められる可能性もあるのではないだろうか。これも広告付きプラン導入によるNetflixのボトムラインの影響のリスク要因の1つだ。

さらに、Netflixは広告業務の中にもテクノロジーもないために、GoogleであれComcastであれ外部に業務委託するとなると当然に支払いが発生する。広告と言うある程度利幅の大きいビジネスだが、だがそれでも、その利益から業務委託費支払わなければいけない。単純に広告がボトムラインに反映されるわけでもないだろう。

また、現在の広告は、その広告に対する視聴者の反応のデータも要求されることが多い。それに応えるためには、Netflixの契約者の少なくとも広告に対する反応については広告主に共有しなければいけないかもしれない。これはプライバシー意識に敏感な契約者の反感招く可能性もある。

ネガティブ要因を考えると、広告付プラン導入は果たして利益に貢献することができるのだろうか。あるいはNetflixのブランドイメージを維持することができるのであろうか。その答えは、どちらもネガティブのような気がする。

Shogohttps://leicaleica.jp
大学教授 研究テーマは、メディア、マーケティング、サブカル。趣味は、写真、海外テレビドラマ、ミステリ、写真。流行っていないもの限定の嗅覚で生きています。
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